液晶自然破壊の怪に、延長保証は有効に機能するのか?

 大手量販店のサポートカウンターで働いていた頃のお話です。年の頃は30代半ば、ごくごく普通のおとなしそうな男性がご来店されました。傍らには派手に液晶が壊れたノートパソコンが。

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夜中に液晶画面が自然破壊した?

「朝起きたら、液晶が割れていたんです。」
「さようですか」

ん、何か怪しいぞ!

「ほんとに何もしてないんですよ。朝起きたら割れていたんです。」
「さようですか…」

わざわざ自分から「何もしていない」と申告される方には2通りのパターンがあります。本当に何もしていない方と、何かしまくった方です(笑)。なるべく先入観は持たないように対応しますが、秘かに警戒レベルを1段階上げます。

「まだ買って半年ぐらいなんですよね。」
「さようですか。」

ショックですよね。お気持ちはよくわかります。お気の毒な限りです。私にできることなら何でもしてあげたいと思います。ただしあくまで、できることに限られますが。更に警戒レベルを1段階上げます。

入って安心、延長保証!

「でも、○×△さんで買って本当に良かった!延長保証がありますからね!」
「さようですか…」

警戒レベル3段階特進です。
延長保証とは、メーカーの保証期間(通常1年)を過ぎた後に、ユーザの瑕疵によらない自然な使用範囲での故障に対して、修理代金の全額もしくは一部を販売店が負担する保険のようなサービスです。購入時に、一定の掛け金を支払ってもらいます。

「自然な使用範囲での故障」がポイントで、自然な使用範囲で液晶が派手に破損するケースはほとんどありません。

入ってなかった、延長保証!

「まず、パソコンを拝見いたしますね。メンバーズカードはお持ちですか?」

メンバーズカードをレジにスキャンすれば、お客様の名前や住所などの個人情報はもちろんのこと、購入履歴や修理履歴、延長保証の加入の有無や保証期間などの情報を見ることができます。おもむろにスキャンすると…

  • 対象パソコンの購入日は、1年6か月前
  • 延長保証の加入履歴なし
  • う~む、どうしたものか…。でも、勘違いということもありますから…、パソコンを買った日を正確に覚えている人なんてほとんどいませんから…、ましてや延長保証に入ったかどうかなんて私なら全く覚えてませんから…。

    対象パソコンを視認で検証してみると

  • 正面右上部に拳大のへこみあり。液晶表面が粉々に砕けていることを確認。
  • へこみ部分から放射状に走る亀裂を確認。
  • 破損の中心部分および、亀裂部分から液体が滲出していることを確認。
  • 液体に交じって、凝固した血痕と思われる赤黒いしみを複数確認。
  • 殴っちゃあいませんか!パソコンを!

    無表情のまま、破損個所のスケッチを描いていきます。時間の経過によって破損個所の状態が変化する可能性がある場合は、まず最初に詳細なスケッチを描きます。この段階ではまだ対象パソコンに触ってはいけません。警戒レベルMAXで慎重に対応していきます。

    「いやあ、○×△さんで買って本当に良かった!交換してくれますかね?新しいパソコンと。」
    「……」

    撃墜モード突入です…。

    以下の詳細なやり取りは自粛いたしますが、

  • 購入されたのが1年半前であり、メーカー保証の期間が過ぎていること
  • 購入時に延長保証には入っていないこと
  • 自損による故障の可能性が高いこと
  • 修理代金の見積もりは後日メーカーから連絡が入るが、液晶交換の場合数万円はかかる可能性が高いこと
  • 最後に、この状態で新しいパソコンと交換することはできないこと
  • を丁寧にご説明させていただきました。およそ1時間ほどかけて、丁寧にご説明させていただきました。が、ご納得いただけなかったようで、パソコンはそのままお持ち帰りになりました。メーカーさんと直接交渉されるそうです。

    何のための延長保証だ!

     素敵な捨て台詞を残して、お帰りになりました。

    いやいや、入ってませんから延長保証。
    もし入っていたとしても、殴り壊したパソコンには適用されませんから。

     延長保証で延びるのは、保証を受けることができる期間であって、保証内容が際限なく延びるという都合の良い話はありませんよ、というお話でした。

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